望月会計事務所

所長コラム
 

2004年2月

 『司馬遼太郎が語る日本』(朝日新聞社)という本があります。1970年代初頭から90年代中頃までの全国各地で行われた司馬遼太郎の講演を4冊の本にまとめたものです。そこには有史以来の各時代における日本の、あるいは日本人の有り様が具体的かつ生き生きと語られています。

 歴史の授業で学ぶ日本史がせいぜい明治期までなのに対し(少なくとも私の記憶ではその辺りまでだったような気がしますが)、今の我々の生活文化や価値観のほとんどは、戦後アメリカなどから導入されたものに大きな影響を受けています。この「知識と実感とのズレ」、あるいは「アイデンティティの分裂」。この講演録や他の司馬遼太郎の小説などは、そのズレや分裂を繋ぎ合わせてくれる、そういった効果をも有しているように思います。出版業界が不況といわれる中、司馬遼太郎モノのみが例外であるというのも、そう考えるとなんとなく分かるような気がします。