望月会計事務所

事務所ニュース

News 2004.2月号

望月会計事務所
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 寒中お見舞い申し上げます。

 穏やかな好天に恵まれたこの正月、自宅から徒歩で20分ほどの所にある弘明寺という寺に初詣に行きました。参道でもある弘明寺商店街には、参拝客の長い列ができており、境内に辿りつくまでには、かなりの時間を要することになりました。後日ネットで調べたところ、弘明寺の創建は721年、つまり奈良時代にまで遡り、横浜の中では最古の真言宗の古刹であることがわかりました。


 千年以上にわたり存在し続ける寺。
 そこに今年も参拝に訪れる多くの人々。


 変化の激しい時代の中で、この正月の光景は今年も変わりありませんでした。諸行無常の世の中ではあるけれども、その変化のスピードやリズムは一様ではない。日々時間に追われたような生活を送る現代人にとって、初詣は、そんな時間というものの「多様性」を感じることができる貴重な瞬間でもあるように思いました。

 一方で、今我々の社会において、「多様性」に関わる様々な問題が取り沙汰されています。個性化教育、世代間ギャップ、国際紛争等々、個人レベルから国家間レベルにおいてまで、その問題は広がりを見せています。

 「多様性」が持つ「豊かさ」、その価値を改めて考えるべき時代であるのかも知れません。

 ブラックバスしかいない湖に、人は「豊かさ」を感じることはないのですから。

1.平成16年度税制改正大綱

 平成16年度税制改正大綱前文では、「持続可能な社会保障制度の確立」と「地方分権の推進・地方自治の確立」を今日のわが国の基本的課題とし、その税制面での手当として、むこう数年間に「年金課税の適正化」、「定率減税の縮減」、「国から地方への税源移譲」、そして「消費税を含む抜本的税制改革」に取り組むと謳っています。

 また今年度の改正案では、デフレ不況克服のための経済活性化策(減税策)が前面にアピールされていますが、一方で「土地等の譲渡損失の損益通算の廃止」や「土地等の長期譲渡益に対する100万円特別控除の廃止」などの財政再建化策(増税策)もしたたかに織り込まれた内容となっています。

 以下、主要改正点について説明致します。更なる詳細については例年同様、3月の法案成立後、本ニュース及び冊子にてお伝えする予定です。

【住宅税制】

○住宅ローン減税

現行制度は平成16年まで延長し、以後平成20年まで段階的に控除限度額の低減を行う。

・控除期間(10年間)の累計最高控除額の推移
 〜平成16年→500万円
  平成17年→360万円
  平成18年→255万円
  平成19年→200万円
  平成20年→160万円

○居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除

譲渡資産に係る住宅ローンの残高がない場合でも適用対象に加える。

○居住用財産の譲渡損失の繰越控除

譲渡資産に係る住宅ローンの残高が譲渡価額を超える場合、その差額を限度として譲渡損失の繰越控除を認める。

【土地税制】

○土地、建物等の長期譲渡所得

  • 税率を現行26%から20%(所得税15%、住民税5%)に引き下げる。 (→別紙1)
  • 100万円の特別控除を廃止する。 (→別紙1)

○土地、建物等の短期譲渡所得

税率を現行52%から39%(所得税30%、住民税9%)に引き下げる。(→別紙1)

○土地、建物等の譲渡損失の損益通算

他の所得との損益通算を廃止する。

【中小企業税制】

○非上場株式の譲渡益課税(→別紙2)

税率を現行26%から20%(所得税15%、住民税5%)に引き下げる。

○中小同族会社株式(特定事業用資産)の相続税の課税価格の特例

特例対象となる同族会社株式等の価額上限を現行3億円から10億円に引き上げる。

○相続財産に係る非上場株式の自社株譲渡時のみなし配当課税

相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡(金庫株化)した場合、みなし配当課税は行わず、譲渡所得として課税する。

【金融・証券税制】

○非上場株式の譲渡益課税(再掲)

○公募株式投資信託の譲渡益課税

下記のとおり、上場株式等と同様の扱いとする。

  • 譲渡益に対し10%(所得税7%、住民税3%)の優遇税率を適用する。
  • 譲渡損失に関し、繰越控除制度の適用対象とする。
  • 特定口座における管理の適用対象とする。

○特定口座の開設主体の拡充

特定口座の開設主体に銀行等を加える。

【年金税制】

○公的年金等控除

65歳以上の者に対する公的年金等控除に関し、上乗せ分を廃止する一方、最低保障額として50万円を加算する。

○老年者控除

老年者控除50万円を廃止する。

【法人税制】

○欠損金の繰越期間

繰越期間を現行5年から7年に延長する。平成13年4月1日以後の開始事業年度に生じた欠損金より適用する。

○連結付加税

連結付加税2%を廃止する。

【その他】

○青色申告特別控除

正規の簿記による場合の控除額を現行55万円から65万円に引き上げ、簡易簿記による場合の45万円の特別控除は廃止する。

2.消費税の総額表示義務について

 平成15年度の税制改正により、事業者が一般消費者に対し取引価格を表示する場合には、消費税込みの価格で行うことが義務付けられました。今年の4月1日以後の取引から適用されますが、それを前に本制度について改めてその内容の確認をしたいと思います。

【適用対象】

  • 一般消費者への小売段階での価格表示(→事業者間取引については強制されない)
  • 課税事業者のみを対象(→免税事業者には適用されない)

【罰則】

値札等を税込表示に変えなくとも、罰則は特にない。ただし、税込表示と思って購入しようとした消費者との間でトラブルになる可能性はある。

【総額表示の方法】

[例]本体価格9,800円、消費税490円の場合

<認められる場合 ‾税込価格がどこかしらに表示されている>

  • 10,290円
  • 10,290円(税込)
  • 10,290円(本体価格9,800円)
  • 10,290円(内消費税490円)
  • 9,800円(税込10,290円)

<認められない場合 ‾税込価格がどこにも記載されていない>

  • 9,800円(税抜)
  • 本体価格9,800円+税
  • 本体価格9,800円+消費税490円

【単価、料率の表示】

一定の料率のみを表示するような場合でも、事実上取引価格を表示している場合には総額表示が義務付けられる。

[例]

  • 食肉販売: (従来) 100グラム200円 → (改正後) 100グラム210円
  • ガソリン: (従来) 1リットル100円 → (改正後) 1リットル105円
  • 不動産仲介: (従来) 売買価格の3% → (改正後) 売買価格の3.15%

【価格表示の媒体例】

値札、メニュー、品書、商品陳列棚、パッケージ印刷、書籍の価格表示、広告、チラシ、看板、ポスター、カタログ、パンフレット、価格表等

【総額表示の対象外】

  • 価格表示を行わない場合
  • 値引販売における価格表示
  • レシート、請求書における表示
  • 希望小売価格の表示

【レジ・システムの変更について】

 今回の総額表示義務はレジ・システムの変更を義務付けるものではありません。しかし、従来の「税抜価格を基礎とするレジ・システム」を利用し続ける場合、下記のように消費者の考える支払金額よりも請求額が上回ってしまう可能性があります。

[例]税込価格157円(税抜価格150円、消費税7円(端数切捨))の商品を2個販売した場合

  • 従来のレジ・システムによる請求額:
     150円(税抜)×2個×1.05=315円
  • 消費者の考える支払金額:
     157円(税込)×2個=314円

    ⇒315円−314円=1円の差額が発生

 また、そもそも税込価格で表示される値札をもとに、税抜価格でレジ入力を行うことが可能か、といった問題もあります。

 これらの問題への対処としては下記のような方法が考えられますが、ゆくゆくは「税込価格を基礎にするレジ・システム」への切り替えが必要となると思われます。

  • 税込価格が円未満の端数となる場合には、端数のまま値札表示とする。
    (例)157.5円
  • 税込価格が円未満の端数となる場合には、端数を切り上げて値札表示とする。この場合、消費者の考える支払金額よりも請求金額が少なくなる可能性がある。
  • 値札に税込価格と税抜価格を併記する。

 なお、規則22条1項(消費税の積上計算の特例)については、平成16年4月1日をもって原則廃止されますが、レジ・システムの移行時間等の考慮から、経過措置として当分の間、所定の要件を前提に適用ができます。

3.メール・マガジンの紹介

■Webook/松山真之助

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