電子取引の領収書等の保存方法について

2021/12/23 木曜日

電子帳簿保存法の改正に伴い、領収書などを電子データ(PDFファイル等)で受領した場合にはそれを出力して紙で保存することが認められず、一定の保存要件のもと電子データのまま保存することが求められることになりました。

国は当初、一定の保存要件を満たさない場合には青色申告の取消しなどの罰則を科すことを示唆していましたが、来年1月から適用を開始することは現実的に無理があり、適用直前になって国の方針が変更されるという事態になりました。

結果として、保存要件を満たさずとも直ちに罰則が科されることはなくなり、さらに今回公表された令和4年度税制改正大綱において、適用開始に2年間の猶予期間が設けられることが明らかになりました。

 

【これまでの経過】

  • 令和3年3月 令和3年度税制改正法案の成立

電子帳簿保存法の改正により、令和4年1月1日以降は電子取引の取引情報は電子データで保存することが義務付けられ、出力書類(紙)での保存が認められなくなった。

 

電子取引の電子保存の要件を満たしていない場合には青色申告の取消し対象等になる可能性がある旨が明示された(問42)。

 

取引が正しく申告に反映され取引情報の内容が書面等で確認できる場合には、電子保存の要件を満たしていないことを理由にして、直ちに青色申告の取り消し等が行われることはない旨が明示された(補4)。

 

電子取引の電子保存について、令和4年1月1日から令和5年12月31日まで2年間の宥恕措置を講ずる旨が明示された(第二.六.5.(8))。

「やむを得ない事情」の存在を要件としているものの、事前の税務署長への承認手続きは不要とされた。

 

【対象となる主な電子データ】

  • 電子メールに添付された電子データ
  • 取引先のサイトからダウンロードや画面印刷した電子データ
  • DVDなどの記録媒体を介して受領した電子データ

 

【保存要件】

電子保存の際には真実性と可視性を確保する観点から、「改ざん防止措置」と「検索機能の付与」を施すことが求められています。

  • 改ざん防止措置 ・・・ タイムスタンプの活用、改ざん防止機能のあるソフトウェア等の利用、改ざん防止の事務処理規程の備付のいずれかの措置
  • 検索機能の付与 ・・・ 検索機能あるソフトウェア等の利用、表計算ソフト等で索引簿の作成、データファイルに規則性を持った名称を付与のいずれかの措置

 

【具体的な保存方法】

上記の保存要件を満たす保存方法として、現時点では下記のような方法があると考えられています。

1.認証ソフトウェア等を利用する方法

電子帳簿保存法の要件に適合したソフトウェア等であるかは否かは、JIIMAの認証ロゴによって判断することができます。

ソフトウェア等の導入の際には、使いやすさやコストのほかに、途中で乗り換えが可能か否かなどのチェックも必要になるでしょう。

現在公開されているサービスとしては、マネーフォワード社の「マネーフォワードクラウドBox」や名南経営社の「MyKomon電子帳簿フォルダ」などがあります。

 

2.事務処理規程の備付かつ電子データへ規則的なファイル名を付与する方法

事務処理規程については国税庁HPでサンプルが公表されていますので、これを自社用にアレンジして利用することになると思われます。

電子データのファイル名には「日付、金額、相手先名」を付す必要がありますので、一定の手間がかかりそうですが、この方法であればコストはかかりません。

 

3.電子保存は行わず、すべて紙で保存する方法

電子保存を回避するために領収書等を電子データでは受領せず、すべて紙で受領する方法に切り替えるという方法も考えられないわけではありません。

しかし、自社だけでなく取引先にも一定の手間やコストをかけさせてしまうことや業者によっては紙による取引データの発送に応じないということも予想されるため、有力な選択肢にはなり得ないと思われます。

 

【今後の流れ】

今後、猶予された2年間のうちに、どの保存方法を採用するかについて検討を行い、決定、導入することになります。

ソフトウェア等の利用を採用する場合にはソフトウェア等の選別もしなければなりません。

確かに厄介なことではありますが、将来に向けた自社のデジタル化の仕組みを構築する一つの機会として前向きに捉えることもできなくはないでしょう。

この2年間の間にはインボイス制度の導入という大きなトピックスもあります。

弊所では、電子帳簿保存法やインボイス制度に関する情報提供やご相談への対応を適宜行っていく予定ですので、ご質問、相談などがあればご遠慮なく弊所の担当者あるいは所長までお問い合わせ下さい。

 

(参考)国税庁パンフレット

電子取引データの保存方法をご確認ください

 

(望月)