不動産仲介手数料と消費税

2014/12/05 金曜日

不動産仲介手数料の額は、一般に、「売買価格×3%+6万円」という計算式で表される。

これは、宅地建物取引業法上の媒介報酬規定を簡易な計算式で表現したもので、売買価格が400万円を超える場合であれば、そのまま利用できる。

ちなみに、売買価格が200万円超400万円以下の場合には「売価×4%+2万円」、200万円以下の場合には「売価×5%」という計算式になるが、一般にあまり言われることはない。

先の計算式で、いざ仲介手数料を弾こうとするとき、(人によっては)以下の2つの点で少々迷うことになる。

  • 「売買価格」とは税込価格なのか、税抜価格なのか
  • 計算された仲介手数料の額は、税込価格なのか、税抜価格なのか

 

結論を言うと、売買価格、仲介手数料とも税抜価格である、が正しい。

したがって、仲介手数料を税込価格で表すとすれば、下記のような計算式になる。(以下、+6万円は省略。)

売買価格(税抜)×(3%×1.08)=売買価格(税抜)×3.24% …<計算式A>

(宅地建物取引業法の媒介報酬規定の表では、仲介手数料を総額表示(税込価格)とするために、売買価格に乗じる率それぞれにに消費税をあらかじめ織り込んでいる。)

 

ここで、×1.08を3%に対してではなく、売買価格(税抜)に対して行うと、

(売買価格(税抜)×1.08)×3%=売買価格(税込)×3% …<計算式B>

となり、<計算式A>よりもスマートで覚えやすいものになる。

実際に、仲介手数料の算定を<計算式B>で行っているという話も聞いたことがあるが、実は、この<計算式B>では正しい仲介手数料(税込)は算定されない。

なぜならば、土地等の売却取引は非課税であるので、「税抜価格×1.08=税込価格」という式は成り立たないからである。

建物だけの売買取引であるならば、<計算式B>でも問題ないが、土地や借地権などが絡むと<計算式B>は<計算式A>と同じ結果にはならない。

 

【例】土地2,000、建物1,000(税抜)の売買に関する仲介手数料(税込)

  • <計算式A> (2,000+1,000)×3.24%=97.2(→税抜価格90)
  • <計算式B> (2,000+1,000×1.08)×3%=92.4(→税抜価格85.5)

土地取引に係る仲介手数料の消費税相当額(4.8=2,000×3%×0.08)だけ、<計算式B>の結果は<計算式A>よりも小さくなる。

 

また、上記の例で、消費税率が10%になると、それぞれの計算結果は次のようになる。

  • <計算式A> (2,000+1,000)×3%×1.1=99(→税抜価格90)
  • <計算式B> (2,000+1,000×1.1)×3%=93 (→税抜価格84.5)

両式の計算結果の差は、消費税率が高くなるほど大きくなることがわかる。

 

宅地建物取引業法の媒介報酬規定は、あくまで上限額に関するものなので、建売業者と仲介業者との間で、仲介手数料の算定を<計算式B>に依ると取り決めたとしても、上限額以下となるため法的な問題はない。

しかし、それが<計算式A>と同じ結果になるはずという誤った前提に基づくものであるならば話は違ってくる。

先の例では、消費税率が8%から10%に上がることにより、仲介業者の税抜価格での売上は、85.5から84.5に下がっている。

つまり、これは消費税の増税分の転嫁が仲介業者から建売業者に完全には行われていないことを示している。

仮に、仲介業者に<計算式B>が強要されているとすれば、消費税転嫁対策特別措置法に抵触する可能性がないとは言えないだろう。(あくまで仮定の話ではあるけれども)

 

(参考)

仲介手数料の算定は、売買価格と率のそれぞれについて消費税を込みとするか抜きとするかにより、4通りの計算式が考えられる。

宅地建物取引業法上の上限規定である<計算式A>に比較すると、各計算式による算定結果は以下のようになる。

  • <計算式A> 売買価格(税抜)×3.24%
  • <計算式B> 売買価格(税込)×3% →土地等の取引がある場合、Aよりも安く算定
  • <計算式C> 売買価格(税抜)×3% →消費税相当額だけAよりも安く算定
  • <計算式D> 売買価格(税込)×3.24% →建物の取引がある場合、Aよりも高く算定

 

(望月)