社員等への食事の支給

2014/10/10 金曜日

先日、当所のあるお客様から、会社に税務調査が入り社員食堂での食事代について否認を受けたとの話を聞いた。(税務顧問ではないので、当所が税務調査に立ち会ったわけではない。)

最近は、マンションの管理組合までもが課税されるお時勢で、世知辛くなったもんだと感じてはいたが、いよいよ社員食堂も当局の射程圏内に入ったようだ。(追記:「社食への課税は昔からやっとるがな」という声も聞こえてきましたが)

 

●課税されない要件と給与認定額

会社がその役員や社員へ食事を支給する場合、以下の2つの要件を同時に満たせば、(現物)給与として扱われることはない。

  1. 食事の価額の半分以上を本人(役員や社員)が負担していること
  2. 会社負担額(=食事の価額-本人負担額)が1ヶ月あたり3,500円以下(税抜)であること

(所得税基本通達36-38の2)

2つの要件のうち、いずれかでも満たさない場合には給与認定されることになるが、課税対象となるのは、上記の基準を超過した部分ではなく、会社負担額の全額となる。

例1)1ヶ月あたり、食事の価額5,800円、本人負担額2,800円の場合

  • 本人負担割合:2,800円/5,800円=48.27% <50% →給与認定あり
  • 給与認定額:5,800円-2,800円=3,000円(5,800円×1/2-2,800円=100円ではない)

例2)1ヶ月あたり、食事の価額7,600円、本人負担額4,000円の場合

  •  会社負担額:7,600円-4,000円=3,600円 >3,500円 →給与認定あり
  •  給与認定額:3,600円(3,600円-3,500円=100円ではない)

非課税限度額から少しでも超過すると、いきなり大きな課税対象額が生じるという建付けは、使用人への社宅賃料やみなし譲渡課税などと同じであり、税法のいやらしい部分でもある。

 

●食事の価額

「食事の価額」とは、

  1. 社員食堂などで会社が調理して支給する場合には、その材料等に要する直接費の額
  2. 会社が仕出弁当などを購入して支給する場合には、その購入価額

をいう。(所得税基本通達36-38)

2.の場合は、「食事の価額=購入価額」でわかりやすいが、1.の場合には、どのような単位で算定するのか(年間ベースか月間ベースか、各社員ごとか全社員の合計か、各メニューごとか全メニューの合計か等々)や社員食堂の運営を外部委託している場合の取扱いなど、明確でない点もある。なお、社員食堂のおばちゃんの人件費や水道光熱費については、「直接費」とはみなされず「食事の価額」には算入されない。

 

●現金支給の場合

食事代として現金を支給する場合には、その全額が給与として課税対象となる。

ただし、深夜勤務(午後10時から翌日午前5時までの間の勤務)で夜食の現物支給ができない場合に限り、1食あたり300円以下(税抜)であれば、給与認定はない。

深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭に対する所得税の取扱いについて

 

●残業等の場合

残業、宿日直の際の食事の現物支給は、無償であっても給与認定はない。(所得税基本通達36-24)

では、残業、宿日直の際に食事代として現金支給した場合にはどうなるであろうか?

先述の「深夜勤務に伴う…所得税の取扱いについて」は、正規の勤務時間が深夜となる勤務者への現金支給に関する規定であって、残業、宿日直に関する規定ではない。

残業で勤務が午後10時以降の深夜に及んだとしても、それは正規の勤務時間ではないので対象にはならない。

したがって、残業、宿日直の際に、食事代の現金支給があった場合には、原則としてその全額が給与として課税対象になると思われる。

ただし、宿日直については、宿直料又は日直料として勤務1回あたり4,000円以内の支給であれば非課税とする規定(所得税基本通達28-1)があるので、食事代を含めてもその額以内であれば、結果として食事代は非課税となる。

 

ということで、一句。

世知辛い ああ世知辛い 世知辛い

 

参考)No.2594 食事を支給したとき

 

(望月)