繰延消費税額等、この複雑にして悲しきもの

2013/07/11 木曜日

消費税の課税事業者は、売上等に係る消費税等(仮受消費税等)から仕入等に係る消費税等(仮払消費税等)を控除し、その差額を納付することによって、消費税等(消費税+地方消費税)の納税義務を果たす(原則課税を前提)。

しかし、売上等の中に非課税売上があり、かつ下記のいずれかに該当する場合には、通常、仮払消費税等の全額を控除することはできない。

  1. 課税売上高が5億円以上の場合
  2. 課税売上割合が95%未満の場合

控除できなかった仮払消費税等は、「控除対象外消費税額等」と呼ばれ、消費税等の納税額はその額だけ増えることになる。

一方、控除対象外消費税額等は法人税の所得計算において損金として扱えるので、その額に法人税の限界税率を掛け合わせた額だけ法人税等の納税額を減らす効果をもつ。

結果として、控除対象外消費税額等が生じる場合には、「控除対象外消費税額等×(1-法人税等の限界税率)」分だけ納税額(法人税等+消費税等)は増えることになる。

 

また控除対象外消費税額等は、法人税法上それが発生した事業年度にその全額を損金にすることができない場合がある。

すなわち、資産に係る控除対象外消費税額等のうち、下記以外のものについては「繰延消費税額等」として一旦資産として計上しなければならず、以後の期間において償却費として費用計上した時にはじめて損金となる。

  1. 課税売上割合が80%以上の場合で、損金処理をしたもの
  2. 棚卸資産に係るもので、損金処理をしたもの
  3. 一つの資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満で、損金処理をしたもの

 

消費税等の税額計算において控除対象から外され、法人税等の税額計算においても損金扱いしてもらえず、結果、行き場なく貸借対照表上に取り残される繰延消費税額等…。

貸借対照表の片隅にひっそりと佇む繰延消費税額等を見かけた際には、是非そこに辿りつくまでの悲しくも複雑な過程を思い浮かべていただきたいと思う(長期前払費用などの科目に集約され表示さえしてもらえないケースも多かったりする)。

 

しかし、そんな繰延消費税額等にも利用価値がないわけではない。

繰延消費税額等(又は控除対象外消費税額等)には、法人税法上、下記のようにその処理方法を選択できる余地がある。

  • 資産に係る控除対象外消費税等について、資産の取得価額に算入するか、繰延消費税額等とするか
  • 課税売上割合80%以上の場合に、資産に係る控除対象外消費税額等を損金経理するか、資産計上するか
  • 棚卸資産に係る控除対象外消費税額等を損金経理するか、資産計上するか
  • 一つの資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満の時に、それを損金処理するか、資産計上するか

これらの経理処理の選択により、合法的な利益調整をすることができるかも知れない。

会計的には「消費税等の会計処理方法」として注記する必要はあるけれども。

 

[参考] 控除できなかった消費税額等(控除対象外消費税額等)の処理

 

(望月)