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News 2002.6月号
望月会計事務所
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スイスの国際経営開発研究所が、主要49カ国の経済力における国際競争力ランキングを先日公表しました。それによると、1位米国、2位フィンランド、3位ルクセンブルク、4位オランダ…と続き(これらも意外な感じがしますが)、わが日本はなんと30位になるそうです。(格付け機関による日本国債の格下げについても、最近話題となりました。)
30位といえば、サッカー後進国と言われてきた日本サッカーの世界ランキング(FIFAランキング32位)とほぼ同じ。ランキングというものは、その評定の仕方によって結果が大きく変わるものではありますが、それにしても経済においては世界の先進国のつもりであっただけに、少なからずショッキングな結果ではあります。ちなみに、アジア勢では、シンガポール5位、香港9位、台湾24位、マレーシア26位、韓国27位、そして中国が31位にランク付けされています。
日本式経営が世界から注目され、ジャパン・アズ・ナンバーワンなどともてはやされたのは、たかだか10数年ほど前のこと。そういえば当時は、他国から妬みまじりにエコノミック・アニマルなんて呼ばれたものでした。
そんな中、W杯におけるサッカー日本代表チームの健闘は、我々に勇気と自信を与えてくれました。ドーハの悲劇と呼ばれる日本サッカー界の失意の日から数えて、約10年の歳月が経過していたことになります。当時の日本代表チームはまだ、世界の舞台に登場することさえできませんでした。それから今日までの間、プロリーグの発足や幾度かの代表監督の交代、W杯への初出場・3戦全敗、一部選手の海外への移籍など、様々なチャレンジや改革や苦い経験があって、そして、その一つ一つが全て今回の代表チームに繋がっていたのだと思います。
10年という年月の重みを感じます。
しかし、目を未来に向ければ、それは希望でもあるでしょう。
サッカーに続いて・・・
がんばれニッポン!
1. 資金循環、あるいはキャッシュフロー
企業の事業活動を資金の流れから観たものを、資金循環表といいます。図で示すと以下のようになります。
資金 → <投資 ・購買活動> → モノ・サービス →
<製造・販売活動> → 売上債権 → <回収活動> → 資金
当初の資金がモノ・サービス等を経て、最後にまた資金に戻り、この循環は完結します。そして、最後の資金が再び<投資・購買>されて、次の循環が始まります。この循環を繰り返すことによって、企業は内部資金を充実させ、事業の継続・成長を図っていくというわけです。
近年、経営や会計の分野で注目を集めている「キャッシュフロー」とは、上記の資金循環を含めた事業活動全般における一連の資金の流れをいいます。そして、その重要性が声高に叫ばれるようになった一因には、多くの企業において、今この資金循環に支障が生じているという背景があります。
例えば、<投資>した事業が思うような収益を生まないという不採算事業の問題。また、<購入>した商品が販売しきれず在庫となってしまう滞留在庫の問題。そして、売上債権を<回収>できないという滞留債権の問題。(さらに、銀行の貸し渋り等が、これに追い討ちをかけているといえます。)
資金循環において問題がどこにあるのかを的確に把握し、いち早くそれに対処すること、それが今、経営上の重要テーマとなっているのです。そして、このような資金やその流れを重視する経営環境に応じて、会計の分野でも、キャッシュフロー計算書、時価主義、減損会計等が徐々に制度化され、企業の業績や財政状態の評価に関して、より資金的な裏付けが求められるようになってきました。
資金循環表を見てみると、<投資・購買><製造・販売><回収>の各活動は、結局は資金を得るための一過程であることがわかります。すなわち、その過程で計上される資産額、売上高あるいは利益だけに注目するのではなく、その事業活動が、最終的に資金にまで結びつくものなのかどうか、その見通しや感覚を持つことが必要とされているのです。 しかし、こうした感覚は、実は我々のような会計の専門家以上に、実際に経営を営んでいる経営者、特に中小企業の経営者の方が、ごく自然に持ち合わせていることがあります。なぜなら、会計上の概念たる売上や利益がいくら大きくとも、資金がなければ事業の存続ができないことを誰よりも肌身で知っているからです。「集計」や「分析」された数値のみに頼るのではなく(会計の専門家として、会計上の概念を否定するつもりは毛頭ありませんが)、事業活動全体を数値以外のものからも直感的、包括的に把握し、その上で経営判断を行うことの重要性が、今改めて見直されているとも言えます。
企業の組織形態がどのように変わろうと、また取引形態がどんなに複雑化しようと、企業活動において、資金の血液としての役割は、今のところ、そして当分の間変わりないのですから。
2. 株式譲渡益課税
昨年二転三転した上場会社等の株式譲渡益に関する税制改正は、昨年10月一応の決着がつきました。が、その中身と言えば、一般投資家を証券市場に取り戻そうという趣旨とは裏腹に、非常に複雑でわかりづらいものとなっています。
しかし、これを上手に利用すれば、個人の所得税において節税を図ることができるのも事実。そこで、今回の改正内容の全体像を概観するために、その内容と適用時期を、別紙に一覧表としてまとめてみました。
(→別紙参照)
(書籍紹介)
■「追われ者」

クレイフィッシュ元社長 松島庸著
東洋経済社 1,500円
日経ビジネス誌上にも「敗軍の将、兵を語る」というシリーズがありますが、時に失敗談は、成功談よりも聞く者にとって、より教訓となることがあります。多くの要素の集合体たる「成功の要因」に対し、「失敗の原因」の多くは具体的で特定しやすいこと、また失敗を経験した時、人はより自分を謙虚に見つめ直し、客観的な状況分析を行っていることが多いことなどが、その理由かもしれません。
本書は、史上最年少で株式公開を果たしたベンチャー企業の社長の、起業からその会社を退社するまでを描いたノンフィクションです。時は1995年から2001年までの数年間、舞台はIT業界。主人公は当時26歳の若者で、本書の著者自身。友人と共に事業を立ち上げ、順調に事業拡大を進め、遂には日米同時の株式公開を果たしますが、その直後に訪れる挫折。
登場人物は、ほとんど実名(ちょっと心配になるほど)で登場し、かなり克明に当時の彼らの行動と、華やかなりし時代のIT業界の様子が描かれています。もちろん著者自身が当事者なので、全てが中立的な記述とは限らないでしょうけれども。
自ら創業した会社から「追われ者」となった事情を、著者は、営業の提携先であり出資者でもあったH通信(本文では実名で記載)との関係にあったと言います。
『屈強な護衛艦(H通信)を従えて、その護衛艦への信頼からたくさんの財宝を積み込んだ船が、出港してみたら、護衛艦が実は海賊だったというような状態だ・・・船長の私は間抜けにも、そんなことには気付かず、観衆の声援に見送られて、ご機嫌で海へと乗り出してしまう』
『・・・何とか沈没を防ごうともがく船長(著者)を尻目に、「日本で初めてのアメリカ型ベンチャー企業」と呼ばれた美しい船体は、乗客(従業員、出資者、取引先等)とともに、無残に深海に沈み始めた。財宝のみが海賊の船に積み替えられ、海賊は次の獲物めがけて船から離れていく。』
技術を持った会社が営業力強化のために営業基盤を持つ他社と提携し、社外より実績を持った人材を招くといったことは、中小会社にとっての一つの経営戦略であり、常套手段でもあります。しかし、それが裏目に出たとき、いつのまにか経営の主導権を相手に握られ、結果全てを失ってしまう、本書はその一つの実例と言えます。
H通信の横暴な手口を糾弾すると共に、著者は、H通信をその規模や知名度で信用してしまったこと、また社外より招聘した監査役数名をその肩書きや経歴だけで判断し採用してしまったことなど、自らの経営者としての甘さを省みます。
スピード経営という名のもと、事業の拡大を急ぎすぎて、それが単に慌しく浮き足立った経営となってしまえば、そこにつけこまれるスキは当然生じてしまうでしょう。また、「史上最年少」とか「日米同時公開」など、外面への意識が強すぎて、着実に経営基盤を築くという地道な作業をなおざりすれば、その結果は見えていると言えるかも知れません。
しかしながら、同時に思うのは、このような失敗を経験した人物が、それを本として世に問うだけでなく、失敗に対する経営責任をきちんと果たした上で、再び事業家としてその経験を生かすことができるようになればということです。そのためには、責任やリスクといった概念がさらに社会に根付き、経営責任や投資リスクなどの範囲がより適切に、そして明確になるなどの環境整備が必要になるでしょう。
事業家が萎縮せず新しいことに積極的にトライでき、また、若い人達が自らの将来の道として、起業という選択肢を持ちやすくなるような状況を創ること。それはまさしく経済の活性化にも繋がるものだと思います。
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